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Special Interviews
岡本 仁氏
―― そんな岡本さんが働く出版業界は、いま不況と言われ、休刊・廃刊が続いています。お仕事の状況はいかがですか?
岡本氏: 休刊・廃刊ラッシュの背景には、雑誌のマーケットそのものの縮小ということがあります。雑誌の主だったブームというのは団塊世代が支えてきましたから、彼らが定年を迎えて通勤しなくなったことで、まずサラリーマン雑誌が売れなくなりましたね。また、雑誌に傾倒してくれる若い世代の情報環境が変化してきたという側面もあります。加えて、若年人口の減少にも一定の原因があると思います。こうした状況は、雑誌に限らず新聞媒体にも言えるでしょう。購読者の平均年齢が上がるとともに、文字もどんどん大きくなってく。みんな何となく予測はしていたはずなのに、何とかなるんじゃないかという楽観がメディアを支配していたように思います。世の中が沸き立つ何らかのシーズを打ち出して、そこに熱気が生まれるという図式は今後もなくなるわけではないと思いますが、それを引っ張っていくメディアが雑誌だけではなくなってきているのは事実です。もし僕が今10歳〜12歳ぐらいで、ケータイとインターネットに囲まれていたら、当然オモシロイと思うものが違いますよね。その時代その時代に、経験し得ることに刺激を与えるもの=メディアというものの変容にどう対応するかがこれからの仕事だと思っています。
―― では、今後どんなメディアが人々の関心を引いていくのでしょうか?
岡本氏: 僕は雑誌の編集者を20年以上やっていますが、「雑誌の将来」とか「メディアのイノベーション」ということ以前に、ポリシーとしてあるのは、常に「これがオモシロそうだ!と自分が思えるものをできるだけ多くの人に伝えたい、わかってもらいたい」という発想です。それを伝えるのに最適なメディアが雑誌だから、現在、雑誌編集者をやっているわけです。他のコミュニケーション方法に可能性があるというのであれば、そちらの方法からのアプローチもミックスしていく発想がいま求められているのかもしれない。だから、従来の雑誌形態だけに固執するだけではダメなような気がしています。では、どういう方法が有効なんだ?ということはまだ残念ながら見つかっていないのでお答えできませんが(笑)。
―― 「これがオモシロそうだ!」、という岡本さんのアンテナがビスポークに向いたキッカケとは?
岡本氏: ビスポーク・ウエアを着るようになったのは、一昨年くらいからでしょうか。きっかけは鎌倉『大佛茶廊』に出入りするようになったことからです。以前、僕ら夫婦は鎌倉に住んでいて、休みの日になると『大佛茶廊』を訪れては午後のお茶を楽しんでいました。そこで、同茶廊のオーナーの野尻さん(Duke of Windsorのエッセイ執筆)とお話しするうちに、ビスポーク・ウエアのイロハを指南され、batakに案内されたわけです。
最初は野尻さんから手取り足取り。もちろん自分の趣味・嗜好について意思表示はしますが、まずは何にも知らないので身体を預け、言われるままの格好をあえてしようと決めました。けれども、営業職時代にしぶしぶ着ていた既製品のスーツ以外知らないため、なかなか自分には「なじまない」というか、自分の気持ちには「なじむ」わけがない。もちろんそれは織り込み済みで、いわゆる定型的なビスポークを決行・断行してみたかったというのが一着目の目的でしたね。
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