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Special Interviews
米原 聖一氏
―― 「普遍的」なデザインをどうやって今の時代に合わせるのですか?
米原氏: いちばん大事なことは発注側の個々の個性に「適合=マッチング」させるという考え方です。例えば、用いる内装材料や生地、木材などのFF&E素材は同じですが、Aというホテルにはこういうデザインがいいけれど、Bというホテルには他のデザインがいいということがあります。目新しさや情報の早さで、流行のデザインをやろうとすると、逆に他のホテルと類似したものができてしまうケースが多い。以前と異なり業界の握っている情報は大体世界中で同じものが流通していますから、情報だけを頼りにすると似たものが多産されるのです。
流行のデザインは早い時期に陳腐化してしまい、後から後悔することになりがちです。
各々のお客様が置かれた条件(それこそが「今」の時代)に「適合」させる提案というものに心血を注いでいるつもりです。ただし、理解が得られない場合があります。どうしても新奇性の強いデザインを求めたり、旬な外国の著名デザイナーに注文したりしないと安心できないお客様が多いのも事実です。この現象は「今」を感じたいといった情緒的な意思によるものは少なく、根底には自信のなさがありそうです。今の日本はそういう流行に足場を取られてしまいがちな風潮かもしれません。例えばここ数年、インテリア・デザインでもミッドセンチュリーモダンと言われる'50年代の家具が流行ってすぐに沈静化した。モノには罪はありませんが、大半の動機が新奇性を求めた結果でブームに過ぎなかった。もしブームの動機対象がモノ単品ではなく、デザインの構築手法があれば、現代にあった手法運用で今の時代感も反映した新しいデザインがもっと出てきたと思います。
―― ビスポークのスーツを考えるとき、それはそのまま当てはまりますね。
米原氏: 昔から衣食住は、国や地域の暮らし方の裏返しでした。季節や祭事、因襲などが服のカタチや機能を決定づけた。世界中にそういうものはありますし、当然ビジネスの中にもある。でも、そういうものが希薄になると、目立つ、話題になるというコトに目がいってしまう。それをメディアもゆがんだカタチで増幅する。「今、ミラノでは・・」とか「今、パリが・・」とか。我々の分野でも同様の傾向にあります。
実際世界にはまだまだ生活の根付いたしかも良質なものを製造したり、販売したりしている企業は多い。そこには普遍的なものがちゃんと品揃えしてあるし、お値段も普通だし、普通の商品が並んでいる。私たちの「イリア」もそういう分野の仕事を目指したいし、狙いとしてはある程度耐久性のあるデザインを世の中に提案してきたいなと思っています。
そのためには、感覚的な話だけに終始するのではなく、デザインが存在する地域であったり、環境であったり、歴史であったり、ホテルや店舗であればそこを訪れる宿泊客・購入客の定性だったりを全方位から検証・整理して、あるロジックを持って、もっとも「適合」した考え方を提案していくことが重要と考えています。
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