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Special Interviews
作業をするカッターのキャリアは、すでに50年を超えている。 注文服が全盛を極めた時代を、身体で体験した貴重な世代だ。
―― テーラー職人のスタッフさんはどのような方たちですか?
中寺: 以前から外注で仕事をしてもらってきた方です。経験は50年以上の方々ばかりで、年齢的には平均70歳前後。中には自身でテーラーを経営していた者もいます。この職人の場合は、自分の店を閉めてから職人として外注仕事を請け負ってきたわけですが、今回、工房の体制を整えるにあたってスタッフに加わってもらったという経緯がありますね。
加えて、テーラーのスクールで学んできた吉澤というスタッフを新たにチームに加えました。テーラーの仕事というのは徒弟制度による技術の伝承が行われてきましたが、手づくりで1点ものを仕立てるテーラーが全盛の時代(国内では'50年代〜'60年代初頭)でさえ、後継者や弟子の確保に苦労をしていたくらいで、そういう意味では若い世代の職人と熟練の職人が一緒に仕事をするというのは、これからの洋服づくりにおいてある意味非常にいい機会であると考えています。
―― 職人を常駐させた最大の狙いはなんですか?
中寺: ふたつの理由があります。まず、サロンと工房を一体的に運用することで、クライアントの要望を作り手が直に把握できることです。つまり、「どんな体型のお客様で、どういう嗜好を持ちで、どういう職業に就いていらっしゃるか・・」というようなことが採寸している横からわかるわけです。裁ち職人(カッター)も、縫い職人(テーラー)も、お客様を知らないまま一方的に指示された作業をするのではなく、洋服づくりの狙いを理解しながら作業をしてくれる。お客様の悩みや課題が直接理解できるから、どういう方法を採ればいいかという50年間に培ってきた引き出しからノウハウを提案してくれる。それによって、一人のお客様から職人の手を経て最後にお客様へスーツが届けられるまでの流れに一体感ができるんです。人間、伝聞でつないでいくと、どうしても勘違いや誤解が生じやすいのですが、それがほとんどない世界が構築できます。
もうひとつは、職人には申し訳ないんですが(笑)、熟練の職人というのは皆高齢者なんです。しかも、注文服のテーラーというのはレディメイドが普及してから50年以上もの間、冬の時代を過ごしてきたおかげで技や知恵が継承されぬまま現代に来てしまいました。本当の技を持っている職人は、もういま残っている人たちがおそらく最後になるでしょう。年期奉公で、ズボン3年、上着5年とか言って型紙に触れさせてもらえるまで何年も地道に修業してきた熟練の職人が元気な間に、そのかけがえのない技から生まれる洋服を、これまで以上に整った生産体制でbatakのお客様に着ていただきたかったという想いがありました。ですから、私がbatakを開店して今日までやってきた仕事の集大成として位置づけています。
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