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Special Interviews
ソリマチアキラ氏
―― 英国のスーツに憧れるようになったわけですが、その頃、渡英の経験は?
ソリマチ氏: 30歳になった頃、GQ JAPANに連載されていた加藤和彦さんのコラムでイラストを書かせていただいて、加藤さんの原稿を毎回拝読していただくうちにどんどん英国に傾倒していったのですが、それと前後してロンドンに遊びに行っています。不勉強なまま行ってしまったので、いまから思えば残念なことばかり。見ておくところ、訪ねたい店なども行っていません。時代は'90年代のはじめでした。その頃のロンドンは音楽的に面白かった。自分でバンドをやっていた時代で、ロンドンのブリックストンという地区でJAZZ専門のクラブが目立ちはじめ、「ブランニューへビーズ」や「ガリアーノ」といったアシッドJAZZの流れからクラブJAZZが盛り上がっていました。でも、加藤さんが書かれていた昔のロンドンの話の方が断然面白い。'60年代のロンドンにタイムマシンで行けたらいいな、と思いましたね。
―― ソリマチさんが服装の面で影響を受けたアーティストは誰ですか?
ソリマチ氏: 若い頃、BRASSAIの写真に打ちのめされましたが、そのポートレイトの中に30代のサルバドール・ダリがダブルブレストのスーツを着ていた写真があって、それを見たときにすごく興奮した覚えがあります。ヨーロッパの画家というのはこうもお洒落なものなのか、と認識を新たにしました。それ以前は、アーティストの作品を観ても、作家本人のポートレイトに興味を覚えることなどありませんでした。後々、意識して作家のポートレイトを見だすようになったら、'60年代まではどの作家もスーツの着方がすばらしいことに気づくのですね。みんな当たり前のようにスーツを美しく着こなしている。当時のヨーロッパの商業デザイナーやシネマタイトルのデザイナーたちでさえも、ツイード・ジャケットを着用したり、ボウタイを結んだりして独自の美学を服装で表現している。しかもアトリエでは、作業着としてでしょうか、リネンのジャケットを羽織っている。そういう装いに美意識を貫くことは大切だなと思います。彼らから、アーティストというのは自分の着ているものや自分のいる空間に気を遣うべきだということを教えられました。
―― 影響を受けたアーティストの格好を真似ようとは思いませんでしたか?
ソリマチ氏: クラシックなものは確かに好きなのですが、日本の景色にそぐわない洋服は違和感を覚えるようになりましたね。年齢的なものでしょうか。憧れのスタイルだけに酔ってしまうのはどうかと思います。クラシックを古いものとして捉えるのではなくて、ひとつの様式として捉えるとそれが持つ美しさは時代が変わってもまったく変動しないと考えるようになりました。そんな発想を持つようになったからこそ、テーラーで洋服をつくるわけで、僕の体型の黄金比というものを活かして、その普遍的な様式にうまくそれに合致させてほしいと願いながらビスポークに臨んでいるわけです。
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